2016.06.20
中部・北陸3日間建築ツアー2日目 その2
各務ヶ原を後にして、
次は柳瀬さんが岐阜の設計事務所時代からのお付き合いで
盟友でもあり、新建築の吉岡賞を受賞された杉下氏設計の
「揖斐の工房と住居」へ向かいました。
陶芸家のお住まいと工房を兼ねた平屋建ての住居で中庭を中心にL字状の
住まいと工房が同じ面積で対峙したプランとなっています。
屋根の棟位置を建物のセンターとせず、中庭寄りにずらすことで
道路側からみた佇まいは、低く抑えられた屋根勾配のように見えながら
中庭から見ると屋根勾配が急なため、立ち上がった屋根面が
よく見えるような工夫がなされています。
杉下氏によれば屋根色はほとんどアルマイト色のアルミ材を使用されている
とのことでよく使われるような黒とかはあり得ないと言われていました。
その当たりにも氏の深いこだわりがあるように感じました。

(右側建物の奥のにじり口が住居のエントランスとなっています)
この中庭、通常、住まいや工房が開くというのが普通の捉え方ですが
ここでは、住まいも工房も中庭に対し閉じており、
無のスペースとなっています。
これは、この住宅が通常の住まいとは異なり、
陶芸のための工房が併設されている結果、
中庭が訪問者に対し陶芸を中心とした行為及び作品の世界へ入る場として
外部からいったん切断する結界のように
捉えられているのだろうと思いました。
それはクライアントに対する建築家の敬意であって
けっして独善的なものではないと思います。
そのように解釈するならば、
住居の入り口をあえてにじり口のようなものにされていることも
理解できると思うのですが-----。
靴を脱ぎ、にじり口から入るとそこはいきなりタタミになっており
寝室がある奥に行くには段を上がって行くようになっています。
また、手前は敷居がわざと高く取られ
またいで居間に入るようになっています。
氏によれば空間がそのままずるずると繋がっていくのが好きではなく
それぞれの空間を分節化して結界としたいと話されていました。

(食堂及び居間、右側が玄関からの入口、敷居が高く取られています)
松山君が杉下氏に興味を持って今回の見学ツアーに入れた理由として
杉下氏による開口部を極限まで絞り込む空間のなかの光の捉え方だということが
この住宅でもよく理解できました。
松山くーーん!来れなくてざんねんねえー!
室内は曇り空でありながら思ったより明るく、決して鬱陶しいものではなく
今後の開口部に対する認識の巾が広くなりました。
杉下氏の風貌は、ここのクライアントであり新進の著名な陶芸家以上に
陶芸家そのもののようでありながら、写真で見るよりずっと気さくな方でした。
柳瀬さんとの長いお付き合いということもあり
わざわざ設計者から解説をして頂けることなど、
通常、住まいながらの住宅では不可能であり、
見学させて頂き本当に良かったと思いました。
杉下さん、柳瀬さんありがとうございました。
つづく----------。
2016.06.17
中部・北陸3日間建築ツアー2日目 その1
建築ツアー2日目。
長良川河畔のホテルをバスで出て、
伊東豊雄氏設計の各務原(かがみがはら)の葬祭場へ向かう。
6年前にスタッフだった平野くんとともに一度見に来たことがありました。
今回はつつじが咲き、池には蓮の花も咲いており大変良いシチュエーションでした。
この建物は伊東さんが設計された建物のなかでもかなりディテールが洗練された
美しく幻想的なものになっていると思います。
外周部の開口はすべてFIXとなっておりシェル状のコンクリート庇に
すっきり納められていますが、排煙の問題はどのように処理されているのか
我々の間で話題となりました。
ボクが考えるところシェル状の屋根と内部の箱との間に機械排煙機が上向きに
納められ箱の中のダクトを通し、
裏側へ排煙するようになっているのではないでしょうか-----–。
それにしても前にも感じたことですが
中に入るとなぜか息苦しく感じるのはボクだけなんでしょうか?
妻とも話したのですが、槙さんの風の丘葬祭場では全く臭わなかった
独特な臭いをここでは感じるのですが------。
つづく-----—。
2016.06.15
公私混同
舛添都知事の事務所経費不正使用疑惑が取り上げられ
マスメディアによる連日の追及によって都議会からも不信任案の提出と
自民、公明各派による可決が成立する状況となり
急転直下、辞職することになりました。
政治家というのは、
むかしはもっと大きな器を持った人が多かったように思ってしまいますが、
日常の生活品購入費や家族の飲食費用まで
公的なお金で流用しているのが本当であれば、
げんなりしてしまいます。
公的なお金である政党助成金に対し税金は取られないのでしょうか。
政党助成金も政治家の収入とみるならば
我々と同じように確定申告を行うことになり
公私混同による税金逃れは違法として扱われます。
自営業の僕たちにとって自分で一生懸命得た収入に対し、
極力経費で落とせればと考慮します。
以前、税務署の監査が当アトリエに入った際 、
スケジュールが書いてあるカレンダーのコピー(5年分)
を求められ提出したところ
土曜日に義理の兄と中華料理を食べたときの領収書とカレンダー上の
「義理の兄、会食」という記述を照合され、経費ではないと注意を受けました。
そんなことも税務署では細かくチェックして
税金逃れがないかどうかやっているわけで
我々も事務所経費とそうではないものの領収証はきちんと分けて整理しています。
税金逃れは犯罪行為に当たるのに対し
我々の税金から出ている政党助成金の使い道に対し違法性がないなんて
おかしいなあと思ってしまいます。
舛添氏のニュースにおいて事務所が1階で2階が住まいとなっている
自宅がテレビで映りましたが
東京大学卒業後や研究員としてパリ大学を出られ、美術愛好家でもありながら
相変わらず最近の日本の政治家の住まいというのは
清貧という言葉に縛られ、または履き違えてみすぼらしい住まいが
庶民的でいいのだと思っているような印象を受けます。
それは大きな間違いで、決してお金をかければいいというものでもなく
清貧でいいのでインテリジェンスを感じさせるものであって欲しいと思います。
前首相の管さんや鳩山さんも建物に対する趣味が悪く
今後我が国のトップに立つような人には、建物に対するインテリジェンスを
持ってほしいと思います。
そういう意味において、我々現代の建築家は予算が厳しく清貧でも
インテリジェンスのある建物を作っているつもりなんですが-----—。
2016.06.06
中部・北陸3日間建築ツアー1日目 その3
2階は約90m×80m、7200㎡の巨大な図書スペースとなっており
屋根は、厚さ20ミリ×120mmのヒノキ材を使用して
力学的に方向性がなくて強いと言われる1辺が60cm程度の正三角形を形成し
シェル状に重ねたものが覆っています。
この巨大なシェル状の屋根を支える柱は、
屋根が木材でポーラス状になって重量が軽い為か非常に細く、
2階の人工地盤であるコンクリートスラブの限られた範囲内であれば
柱位置が自由に設定できるようになっています。
柱はあくまで屋根の垂直荷重だけを支え、
水平的な動きについては外周部に設置されている鋼板が負担しているそうです。
また屋根の雨水の排水はこの柱の中にステンレスの樋が入って処理されています。
構造を説明するだけでも話が長くなりますが、
この図書館の最大のポイントととして
自然エネルギーの活用というコンセプトを実感することができます。
この広いスペースに11か所のグローブという
自然換気システムが設けられています。
グローブはシェル状の屋根の盛り上がった頂点にエアダンパーにより上下動する
可動トップライトとその周囲を固定されたトップライトになっている場所で
形状が気流の解析モデルにより決定された独特なかさ状のもので
細いカーボンワイヤーのフレームに
テキスタイルデザイナーの安東陽子さんによってデザイン、
製作された布が蔽われています。
この場所性を明確化させるために布のデザインはすべて変えてあり
それが場所を示すサインにもなっています。
グローブの下の領域はテーマ別に分けられた本のコーナーとなっており
それ以外に1階の図書の事務スペースとエレベーターと階段によって繋がれた
レファレンスコーナーや手続きを経ない本の持ち出しを感知するゲートが
設けられたエントランスグローブなどによって構成されています。

(槙文彦氏とよく仕事をされている藤江和子氏デザインによる
ビニール状の籐でできた長椅子が置かれているゆったりグローブ)
開架書庫は11か所のグローブが「図」とすれば「地」にあたる部分に
水の波紋のようにレイアウトされています。
屋根兼天井材が可燃性の木材のため、特別に実証試験を行い、
書架をコンクリートのプレキャストで製作し
本からの延焼が及ばないことで許可を得ているとのこと。
こんなに気持ち良くリラックスできる図書館は初めてで
井水を使用した床冷房システムによる気持よさ、
ひのきを使用した天井材による木の香りの気持ちよさ
音を立ててもポーラス状の天井材による吸音でうるさくない気持ちよさ
木というナチュラル感とグローブの布を使用したやわらかさによる気持よさ
空間の広がりとグローブから射し込む自然光の気持よさ等々が挙げられます。
ユニバーサルスペースというのは空間の均質性のことを言い、
ミースファンデルローエによるオフィススペースを中心とした
ユニバーサルスペースはその退屈な均質性に対し
これまで批判を浴びてきましたが
伊東さんの様々な試みの中の一つとして、
仙台メディアテークや多摩美図書館など
新たなユニバーサルスペースを意図的に提案されているように感じます。
その後、長良川沿いの温泉ホテルへ向かい、
夕暮れの黄金の光を受けて輝く
稲葉山山頂に立つ岐阜城を見上げながら
屋上にある露店風呂にゆっくりと浸かった後
浴衣姿で夜更けまで宴会となりました-----–。
つづく-----–
2016.06.03
中部・北陸3日間建築ツアー1日目 その2
如庵がある有楽宛は犬山城の足元に位置し
お城は国宝として指定された全国で5つの城の中のひとつで
木曽川沿いの小高い丘の上に立つ美しい景色を眺めながら
本日のメインイベント、岐阜のメディアコスモスに向かいました。
伊東豊雄建築設計事務所によるこの建物には、
平安さんからの連絡を受けた伊東さんの配慮で、事務所の設計担当者の方が
この集まりのためにわざわざ東京から来て頂くとともに
テキスタイルデザイナーの安東陽子さんも合流され
お二人から現場での苦労も含め、詳細にわたる説明を受け感動ました。
外観は,ハーフミラーなどのガラスが多用されながら
木部材によるオーソドックスなグリッド割りによる外壁との対比により
モダンとトラッドがミックスしたような感じで
ちょっぴりポストモダン時代のような印象を受けました。
また、構造的な構成を矩形に切り取り切断面を見せるやり方は
台湾の台中オペラハウスでも感じたものでした。
外部に突き出た建物はスターバックスが入っているスペースで
最初は唐突に感じましたが、2階図書スペースに取り入れられた
グローブシステムの形状の引用となっており
中にに入って意味がわかるようになっています。
1階は多目的スペースが分散配置される中、
中央部にガラスで囲われた2層の閉架書庫があるため
中心性があるとともに全体がわかりやすい構成になっています。
この2層分のスぺ-スはヨーロッパの公共施設のような広々とした感じで
ゆったりと気持ちよく、また、たくさんの市民がそれぞれ別々の目的で
活動されているのを見渡すこともでき、
数多くの日本における公共施設での多目的というのは
何でもありという形ながらあまり使われていないイメージがありましたが
ここは、その多目的性が十分に生かされてれているという印象を受けました。
1階部分の構造は無梁版構造になっており
グリッド状に配置されたコンクリートの円柱によって支えられています。
事務スペースはカウンターで領域化されたオープンスペースで親近感を
受けるとともに気づいたのは、上に吊るされている照明の色温度で
執務スペースもその他のスペースもすべて3000ケルビンで統一されて
いるということです。これは照明デザイナーの面出薫氏による提案だそうで
さすがです!
1階には200名規模が収容可能なホールもありそこの音響設計は
永田瑞穂音響設計ということでこれも超一流!
つづく------
































