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各務ヶ原を後にして、
次は柳瀬さんが岐阜の設計事務所時代からのお付き合いで
盟友でもあり、新建築の吉岡賞を受賞された杉下氏設計の
「揖斐の工房と住居」へ向かいました。

陶芸家のお住まいと工房を兼ねた平屋建ての住居で中庭を中心にL字状の
住まいと工房が同じ面積で対峙したプランとなっています。

屋根の棟位置を建物のセンターとせず、中庭寄りにずらすことで
道路側からみた佇まいは、低く抑えられた屋根勾配のように見えながら
中庭から見ると屋根勾配が急なため、立ち上がった屋根面が
よく見えるような工夫がなされています。


(中庭に面する工房側壁面、右側に出入り口が見えます)

杉下氏によれば屋根色はほとんどアルマイト色のアルミ材を使用されている
とのことでよく使われるような黒とかはあり得ないと言われていました。
その当たりにも氏の深いこだわりがあるように感じました。


(右側建物の奥のにじり口が住居のエントランスとなっています)

この中庭、通常、住まいや工房が開くというのが普通の捉え方ですが
ここでは、住まいも工房も中庭に対し閉じており、
無のスペースとなっています。
これは、この住宅が通常の住まいとは異なり、
陶芸のための工房が併設されている結果、
中庭が訪問者に対し陶芸を中心とした行為及び作品の世界へ入る場として
外部からいったん切断する結界のように
捉えられているのだろうと思いました。
それはクライアントに対する建築家の敬意であって
けっして独善的なものではないと思います。
そのように解釈するならば、
住居の入り口をあえてにじり口のようなものにされていることも
理解できると思うのですが-----。


(玄関、右がにじり口)

靴を脱ぎ、にじり口から入るとそこはいきなりタタミになっており
寝室がある奥に行くには段を上がって行くようになっています。
また、手前は敷居がわざと高く取られ
またいで居間に入るようになっています。
氏によれば空間がそのままずるずると繋がっていくのが好きではなく
それぞれの空間を分節化して結界としたいと話されていました。


(食堂及び居間、右側が玄関からの入口、敷居が高く取られています)

松山君が杉下氏に興味を持って今回の見学ツアーに入れた理由として
杉下氏による開口部を極限まで絞り込む空間のなかの光の捉え方だということが
この住宅でもよく理解できました。
松山くーーん!来れなくてざんねんねえー!

室内は曇り空でありながら思ったより明るく、決して鬱陶しいものではなく
今後の開口部に対する認識の巾が広くなりました。

杉下氏の風貌は、ここのクライアントであり新進の著名な陶芸家以上に
陶芸家そのもののようでありながら、写真で見るよりずっと気さくな方でした。

柳瀬さんとの長いお付き合いということもあり
わざわざ設計者から解説をして頂けることなど、
通常、住まいながらの住宅では不可能であり、
見学させて頂き本当に良かったと思いました。

杉下さん、柳瀬さんありがとうございました。

つづく----------。

    

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