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2階は約90m×80m、7200㎡の巨大な図書スペースとなっており
屋根は、厚さ20ミリ×120mmのヒノキ材を使用して
力学的に方向性がなくて強いと言われる1辺が60cm程度の正三角形を形成し
シェル状に重ねたものが覆っています。


(屋根のモックアップが1階のホールに立てかけてありました)

この巨大なシェル状の屋根を支える柱は、
屋根が木材でポーラス状になって重量が軽い為か非常に細く、
2階の人工地盤であるコンクリートスラブの限られた範囲内であれば
柱位置が自由に設定できるようになっています。
柱はあくまで屋根の垂直荷重だけを支え、
水平的な動きについては外周部に設置されている鋼板が負担しているそうです。
また屋根の雨水の排水はこの柱の中にステンレスの樋が入って処理されています。

構造を説明するだけでも話が長くなりますが、
この図書館の最大のポイントととして
自然エネルギーの活用というコンセプトを実感することができます。
この広いスペースに11か所のグローブという
自然換気システムが設けられています。
グローブはシェル状の屋根の盛り上がった頂点にエアダンパーにより上下動する
可動トップライトとその周囲を固定されたトップライトになっている場所で
形状が気流の解析モデルにより決定された独特なかさ状のもので
細いカーボンワイヤーのフレームに
テキスタイルデザイナーの安東陽子さんによってデザイン、
製作された布が蔽われています。
この場所性を明確化させるために布のデザインはすべて変えてあり
それが場所を示すサインにもなっています。


(館内サインはグラフィックデザイナーの原研哉さん)

グローブの下の領域はテーマ別に分けられた本のコーナーとなっており
それ以外に1階の図書の事務スペースとエレベーターと階段によって繋がれた
レファレンスコーナーや手続きを経ない本の持ち出しを感知するゲートが
設けられたエントランスグローブなどによって構成されています。


(エントランスグローブ)


(槙文彦氏とよく仕事をされている藤江和子氏デザインによる
 ビニール状の籐でできた長椅子が置かれているゆったりグローブ)

開架書庫は11か所のグローブが「図」とすれば「地」にあたる部分に
水の波紋のようにレイアウトされています。
屋根兼天井材が可燃性の木材のため、特別に実証試験を行い、
書架をコンクリートのプレキャストで製作し
本からの延焼が及ばないことで許可を得ているとのこと。

こんなに気持ち良くリラックスできる図書館は初めてで
井水を使用した床冷房システムによる気持よさ、
ひのきを使用した天井材による木の香りの気持ちよさ
音を立ててもポーラス状の天井材による吸音でうるさくない気持ちよさ
木というナチュラル感とグローブの布を使用したやわらかさによる気持よさ
空間の広がりとグローブから射し込む自然光の気持よさ等々が挙げられます。

ユニバーサルスペースというのは空間の均質性のことを言い、
ミースファンデルローエによるオフィススペースを中心とした
ユニバーサルスペースはその退屈な均質性に対し
これまで批判を浴びてきましたが
伊東さんの様々な試みの中の一つとして、
仙台メディアテークや多摩美図書館など
新たなユニバーサルスペースを意図的に提案されているように感じます。

その後、長良川沿いの温泉ホテルへ向かい、
夕暮れの黄金の光を受けて輝く
稲葉山山頂に立つ岐阜城を見上げながら
屋上にある露店風呂にゆっくりと浸かった後
浴衣姿で夜更けまで宴会となりました-----–。

つづく-----–

  

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