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テレビ朝日の開局60周年記念番組ということで山崎豊子原作の

「白い巨塔」が5夜連続で放送されました。

2003年にフジテレビ開局45周年記念番組として唐沢寿明主演で放送された

「白い巨塔」を田宮二郎主演の映画版「白い巨塔」を観たものとしては、

興味深く拝見させて頂きましたが、

2003年の唐沢版は映画以上に脚本、配役、演出、音楽が素晴らしく、

有料放送での再放送版も何度も観ました。

山崎豊子によるこのドラマは医学界の暗部(旧帝大というエリート意識、

それに基づく医学界での上下関係、教授選に伴う熾烈な派閥争い、

手術ミスの隠ぺい等々)が描かれており、

いろいろな思惑を持った人々が渦巻く人間模様の表現によって

際立ったものになっていました。

 

そんな2003年版を知っていながら、今度は岡田准一主演でやるなんて

余程、自信があるのだろうと思って第1話を観ました。

 

財前の上司である東教授が寺尾聡(映画版は東野英治郎、2003版は石坂浩二)

映画版の東野英治郎は水戸黄門役をやられていた方で黒沢明の映画にもよく

出演された名優ですが、庶民的な顔立ちが水戸黄門にはハマっていましたが

アカデミックな役柄としては微妙な表情の作り方といい石坂浩二が非常に

うまいと思いました。寺尾聡も悪くはない配役ですが、ちょっと枯れ過ぎて

石坂浩二を越えていません。

 

医学部長の鵜飼役が松重豊(映画版は小沢栄太郎、2003版は伊武雅刀)、

このドラマにおいてもっとも曲者の役柄であり、映画版の小沢も2003年版の

伊武も曲者としての演技が素晴らしく、一本やりに見えてしまう松重では

荷が重い配役のように思いました。(むかしのドラマで松重はしつこくて、

ハイエナのようにいやらしい役もうまいと思いましたが)

 

次にこのドラマにおいて最も正義感溢れる財前の同僚である里見役が

松山ケンイチ(映画版では田村高廣、2003版は江口洋介)

演技力で定評のある松山ケンイチですが、なぜか清潔感がなく

演技的に下手であっても江口洋介の方がその下手さで誠実に感じます。

 

あとこれに人間味あふれるいやらしさを出している

財前の義父である財前又一役が小林薫(映画版では石山健二郎 、2003年版では

西田敏行)、石山健二郎という役者はたぶん今後、どんなに探しても

出てこない雰囲気を持った人でありこの役柄は強烈でしたが、

西田敏行も負けず劣らず強烈な役柄を演じていました。とにかくこの役は

エネルギッシュでギラギラしていないと向かず、役者として素晴らしい小林でも

この役ではないと思います。

 

そうしたドロドロした男の世界をあしらって生きているクラブのママ花森役が

沢尻エリカ(映画版が小川真由美、2003年版が黒木瞳)

これは断トツで黒木の圧勝!2003年版では彼女の存在があってこそ全体の構図が

成立していると言ってもいいと思います。

 

そうやって主人公の財前を取り巻く名脇役によってこのドラマの完成度が

上がっていると言ってよく、ドラマの進行や筋書きに変化がなく、演出も

普通であるならば何故、「白い巨塔」を再び製作したのかよくわかりません。

最後に190cm近い松重豊と寺尾聡に挟まれて立つ岡田准一のシーンは

岡田の低さが目立たぬように演出に工夫をすべきであり

主役はやはり颯爽とした華がないといけないと思いました。

 

 

 

 

 

“何故また「白い巨塔」” への1件のコメント

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