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2017.12.02

安藤忠雄展

黒川紀章氏が設計した国立新美術館で行われている「挑戦」と
名付けられた安藤忠雄展に行って来ました。
2度の大手術を経験されてもご本人が言われるには回顧展ではなく
あくまで挑戦としての展覧会だということで
どこまでもパワフルで大規模な展覧会でした。
展覧会はこれまで観てきたどの建築家の展覧会よりも大規模なもので
安藤氏が手掛けた初期の住宅から最新の海外のプロジェクトまでが
紹介されています。
最初のブースでは木でできた住宅の模型とコンセプト及び映像が
プロジェクトごとに紹介され、
列に並びながら一つ一つ読み込んでいくと
最初のブースだけで1時間半ぐらいはかかる内容です。
安藤さんのプランは
住宅であっても幾何学的に整理され非常に美しいものですが、
プランが美しいということは
建物を上から見たイメージが常にあるように思われ、
(実際、建物は上から見られても美しく見えるように防水層の上に砂利が敷かれ
設備的なものも整理されています)
見方によっては目線位置でのプロポーションに対し
初期のころはそれほど意識されていないようにも感じられます。
安藤さんを感覚的だとすれば対称的に磯崎さんは論理的であり
且つ建物のプロポーションにこだわりがあり、
その部分においても対称的のように思いました。
(最近の建築においてプロポーションにこだわる建築家は少なくなっており
九州の耽美派と言われる建築家たち(柳瀬、田中、松山、山田等)は
逆にプロポーションにこだわっていると思います
-----–ボクの勝手な感想ですが-----)
住宅プロジェクトの先には国立新美術館の裏手敷地に
大阪の「光の教会」の実寸大がコンクリート打ち放しで再現されており
空間を体感することができるようになっています。
安藤さんらしい破天荒なアイデアに驚くとともに
この展覧会が前代未聞であることが実感させられます。
「光の教会」は約30坪で予算が3500万円しかないという条件の中
光の入り方と人の動きを考慮した構成が抽象化され
ミニマムでありながら自然光の動きにより豊かな空間を体験することができ
久しぶりに感動しました。
また、この教会の中の横幅と高さの関係性が絶妙でもあり
傑作だと思います。
芸術という行為は抽象化によって表現されるもので
この小さな教会の空間体験を通すことで安藤氏の意図を
素直に感じ取ることができます。
外から再び中へ入ると住宅以降の安藤氏が手掛けた公共建築物や
海外のプロジェクトの巨大な模型、映像などが一堂に展示され
見ごたえがあります。
この展覧会を通して氏の強靭な意志によるぶれない姿勢により
建築家が社会との関わりを持つために大変なエネルギーを使い
常に挑戦されていることに尊敬の念を持ちました。
したがって安藤氏は社会性を獲得した稀有な建築家であり
建築の持つ根源的な力強さを表現している建築家として
また日本においては長い歴史の中に名を残していく偉人としての
逸材であると改めて思いました。
安藤忠雄展は今月18日までとなっています。
また、鑑賞時間は非常に作品のボリュームがあるため3時間~4時間は
かかります、美術展に行ってこんなに時間がかかることはありません。
(音声ガイドはお勧めです)
        

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