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これまで、槇さんをはじめとする著名な建築家たちからもザハによる新国立競技場案に
対し景観やオリンピック後の維持管理面において再考するよう批判をされていましたが
結局、再考しない方針が打ち出され
工事費が2500億かかるという金額が発表された途端
世の中の風潮が一気に再考を促す方向へと変わり
ついに安倍首相が本日、白紙に戻すことを表明するに至りました。

この問題は最近、連日に渡り情報番組で取り上げられていましたが、
よくわからないのは誰が責任者かというのがはっきりしません。
2度目の東京オリンピックを世界に向けてアピールするためのもので計画されたとしても
国民の税金を使うのにだれが責任者なのかよくわからないというのは
だんだん日本の官僚組織というものに対し怒りが込み上げてきます。
また工期的に時間が足りないという一点だけでの再考拒否もいかにも
官僚的で頭にきます。5年も先のことをやり直そうと思えば日本人の勤勉さを持って
出来ない筈がありません。
東京へのオリンピック招致が2013年の9月に決まってから2年近くあったにも
関わらず、コストプラニングを含めその間なにをしていたのでしょうか?
そういえば大会の演出はだれに決まったのでしょうか?
だれか明確な総合プロデューサーみたいな人を先に決め
大会演出方針の作成及び各施設の内容、予算、人事等などについて
常に情報発信を行っていくことが必要だと思います。
新国立競技場についても本来、主催者である東京都がイニシアティブを取って
進めるべきだと思います。

先日、矢作さんの勉強会において、かれは東京で住宅の設計を手掛けているので
最近の建設コスト状況について尋ねたところ、
建築家が手掛ける東京近郊の木造住宅のコストは最低坪単価が
100万円ということで驚きました。
消費税増税前に比べ3割はアップしているようです。
かねてから公共建築では5割アップという情報が出ていましたが
今回の新国立のコスト問題において
当初の予算1300億に対し650億ぐらいは2年前に対する物価上昇分になり
残り550億がプラスアルファの分だということになります。
建設コストについては専門的になるのかもしれませんが
詳細についてこれまでの他国のオリンピック競技場と比較しながら
一体なにが高いのか国民に対し情報開示する義務があると思います。
そういう意味において会計検査院のような第三者機関でチェックしてもらい
どのような部分にお金がかかっているのか国民に対し明確に分かるようにして欲しい。
我々設計者は施主に対し、金額がオーバーした場合、コスト比較表を作成し
何が高いのか説明をするとともに当初の予算へ減額するための代替案を作り
1項目ごとに確認を行います。
そのような作業を実施業務を行っている機関にしてもらい
国民の意向を受けた第三者機関へ説明を行うようにしてもらいたい。

そうした作業を通して費用がかかっている部分の見直しで必要なものと過分なものの
再検討を行い、デザインの変更が必要であれば設計者へ代替えとなるものを
出してもらうべきです。また、設計者もその要望に応えるよう努力するべきです。

そしてその変更が設計者として受け入れられないものだったり、
新たな案を出さないということであれば、
コンペ当選案の断念及び設計者との契約解除に踏み切るというのが
常識的なやり方だと思います。
たぶん設計デザインのザハ側としては、
当初のエイのようなシャープなデザインが現在の亀の甲羅のような
デザインへの変更も苦渋の選択として許容していたのかもしれませんが
日本側の実施部隊とどのようなやり取りが行われていたのかよくわかりません。

とにかくこのような巨額の費用がかかる施設のコストプラニングが結果的に
十分に行われていないということが信じられません。
日本の実施部隊側の設計能力が低く、竹中や大成建設への見積もり段階において
キールアーチを含め施工上巨額な費用がかかることが露呈したというのが実情では
ないでしょうか。

これからはこれまでの反省を踏まえ、景観への配慮やコストプランニング、
大会後の維持管理費なども十分検討された上で
世界に誇れる施設となるようにしてもらいたいと思います。
ぼく自身としては、次点だった妹島さんの案が好みで彼女も世界に誇れる建築家であり
日本人としての現代的な美意識を具現化するのに全く文化的背景が違う
外国の建築家へ頼む必要などないと思うのですが-----–。

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