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台中メトロポリタンオペラハウスは2005年に行われた国際コンペにおいて
最後までザハ・ハディットと競いながら日本の伊東豊雄氏の案が選ばれました。
着工までに紆余曲折がありながら、今年末にはようやく竣工する予定です。

今回、平安氏と末廣氏の伊東氏との個人的つながりにより
現場段階での視察が可能となり実現したことはとても有難く
貴重な体験の旅行となりました。

建設地は旧市街から少し離れたグリッド状に計画された新都心の市庁舎を中心とする
軸線上の最端部に位置し、広い広場に十分なオープンスペースを確保しながら
建てられています。
周りは高層の高級マンション群が立ち並んでいますが
ほとんどは中国資本による投資対象となっているようで住民の姿はあまり見られません。

構造はおそらく世界的にいっても人類が経験したことのないような斬新なシステムで
出来上がっており、これを言葉で表現することは非常に難しいのですが
たまごの殻入れの上部と下部の先端部を水平に切断し、下部を地面に置き
もう一つの殻入の蓋を外して、その下部分の下側先端部を水平に切断して
先ほど地面に置いた最初の殻の上に載せたような形態となっています。
1階部分はアーチ状に地面に下りてくる三次曲面による構造体と空間が連続し
2階ホワイエ、大ホール、中ホールへ上がるらせん階段のあるエントランスホールを除き
外周部に計画される公園とオープンで繋がり、
建物と市民が自由で形式張らずコンサートを通して繋がるという
市民に根差した哲学がこの発想の根底にあります。
したがってオペラハウスとはいえ決して一部の特権階級のために造られている建物
ではないということがこの建築の素晴らしいところだと思います。
大ホール(2014席)と中ホール(800席)は
舞台とフライタワー(緞帳などの吊りものを納める)、舞台背後、
及び両サイドに巨大な舞台装置を納めるスペースが用意され
奈落の深さも何層分ほどの深さがありました。

公園から自由に入れる1階ピロティーは洞窟のように空間が折れ曲がり
非常に変化に富んだシークエンス(場面展開)を体験させてくれます。
最近、いろいろな著名建築家の計画案において洞窟的空間が提案されており
ボクの好きな建築家であるスティーブン・ホールもいくつか提案し実現していませんが
伊東氏の空間は構造的論理性とシステムによって成り立っており
感覚的だけではないとても説得力のあるものになっています。

3階にオフィス、会議室、レストランが洞窟上に連続する空間に配置され
屋上は屋上庭園として一般に開放されます。
近代建築の父と言われるル・コルビジェが提唱した近代建築の5原則
(ピロティ、屋上庭園、水平連続窓、自由な立面、自由な平面)における
もっとも思想性の高い市民のためのピロティと屋上庭園を前提に
新しい構造形式へ発展させたものになっています。

工事中の写真掲載については、今回、伊東事務所から固く禁じられており
残念ながらお見せすることができませんがこの建物は間違いなく
現時点における21世紀初期を代表する世界的建築に挙げられることになると思います。

広場下の地下駐車場の一角にある現場事務所で伊東事務所 藤江氏によるレクチャー。
型枠を使わない(エキスパンドメタルを使用)工法についても詳しく話して頂きました。

興奮が冷めないまま今日宿泊予定のホテルへ-----—続く。

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