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8月末の週にNHKで「LIFE 井上陽水 40年を語る」という番組が
4夜にわたり放送されました。
2夜の途中から観ましたが、陽水と著名な作家たちの交流とその影響や
陽水の曲における言葉としての重要性と不可解な必然性、
言葉のリズム、言葉のイメージや創作の過程などがインタビューと演奏などを絡めながら
とても面白く作ってありました。さすが陽水!、さすがNHK!

親友である作家の沢木耕太郎氏がエッセイで書いていた陽水との有名なやり取りも
紹介されていました。
深夜、陽水から電話があり、宮沢賢治の「雨にも負けず」の全文を聞かれ、
読んであげたそうです。
「雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けぬ、丈夫なからだをもち、
欲はなく、決して怒らず、いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と、味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを、自分を勘定に入れずに-----–」

すると「へーそうか自分を勘定に入れずかあー、すごいなあ」と

「よく見聞きし分かり、そして忘れず、
野原の松の林の陰の、小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば、行って看病してやり
西に疲れた母あれば、行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば、行ってこわがらなくてもいいといい
北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ、褒められもせず、苦にもされず
そういうものに、わたしは、なりたい」
と読み、これでいいのと聞くと
「もう十分わかりましたのでありがとうございます」
と言って電話が切れ、後にできたのが「ワカンナイ」という曲だったそうです。

「ワカンナイ」

雨にも風にも負けないでね
暑さや寒さに勝ちつづけて
一日、すこしのパンとミルクだけで
カヤブキ屋根まで届く
電波を受けながら暮らせるかい?

南に貧しい子供が居る
東に病気の大人が泣く
今すぐそこまで行って夢を与え
未来の事ならなにも
心配するなと言えそうかい?

君の言葉は誰にもワカンナイ
君の静かな願いもワカンナイ
望むかたちが決まればつまんない
君の時代が今ではワカンナイ

日照りの都会を哀れんでも
流れる涙でうるおしても
誰にもほめられもせず、苦にもされず
まわりの人からいつも
デクノボウと呼ばれても笑えるかい?

君の言葉は誰にもワカンナイ
慎み深い願いもワカンナイ
明日の答えがわかればつまんない
君の時代のことまでワカンナイ

「ワカンナイ」は宮沢賢治のアンサーソングになっていながらも井上陽水の詩に
なっているところが凄く、言葉も全て引用しているわけでもなく
言葉同士を新たにつなぎ変えていながらも何となく雰囲気が伝わってくるところも
陽水がいかに言葉に対しての感性が凄いのかがわかります。
作家の五木寛之氏も番組の中で
「陽水は、今までになかった無理な日本語のねじりかたをする。言葉を加工して
おさえたり、引っ張たり、無理なものをつけたりするシュールレアリストたちと同じで
曲にしっくりとはまっている-----–。」と言われえらく納得がいきました。

改めて井上陽水の凄さを感じさせた番組でした。

“LIFE 井上陽水 40年を語る” への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
    PASS:
    『ワカンナイ』、知りませんでした。すごい歌詞ですね。頭の中のぞいてみたいです。
    うちの娘も井上陽水の歌にハマり(車のCDに影響されて)、『氷の世界』を熱唱します。やっぱり歌詞が好きなようです。
    10年以上前ですが、デーモン小暮氏がダウンタウンの番組で披露していた井上陽水氏のエピソードが忘れられません。
    ある日、陽水氏がデーモン氏の留守電にメッセージを入れていたそうです。
    『……僕はいま…人の留守番電話に…何を話すかということを、考えているというか研究しているというか うっふっふっふピー(留守電メッセージ時間切れ)』
    すると2件目、
    『キミんちの留守番電話ねぇ!短いよ!』。
    ダウンタウンはじめみんな大爆笑していました。
    変なコメントですみません。

  2. SECRET: 0
    PASS:
    氷の世界は、亡くなった姉がまだ短大生でボクが高校生の時に
    3DKの狭い社宅のタタミ部屋に置いてあるセパレートタイプの
    オーディオで、買ってきたLPレコードを姉がよくかけて聴いていたことを
    思い出します。
    やっぱり、あの時から歌詞が凄いですよね!
    日頃、おとなしそうに見えるお嬢さんが陽水を熱唱するなんて
    是非、聞かせて下さい!

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