2010.12.13
映画「切腹」
大学の映画学科志望の次男が映画「切腹」のリメイクを監督が 三池崇史、
主演、市川海老蔵で進められていることを知り、落胆していました。
「切腹」は1962年に小林正樹監督、仲代達也主演で上映されカンヌ映画祭の
審査員特別賞を受賞するなど武士道の虚構を描いた重いけれども素晴らしい作品です。
ボクは、前の会社の大阪事務所にいた頃(23歳ぐらい)にリバイバルで見て
とても強い感銘を受けた映画です。何といっても脚本が素晴らしく(橋本忍)
映画を見ている観客に対し、映画のシーンの中に入り込んだ第三者としての感情を
抱かせながら、引きずり込んでいきます。
主演の仲代は老武士としての老け役ですが、当時の年齢が30歳ということを
後から知って驚きました。とんでもなくうまい演技です。
余談ですが、黒澤明の「用心棒」を次男が中学生の時に見せたときは飽きずに見て、
三船敏郎扮する用心棒が家老の奥方からあなたのお名前はと聞かれた時に
庭に咲いている椿を見ながら咄嗟に「椿三十郎」と答えるセリフがあり、
それを見た次男は当時、百道中での通学途中での松林を見て
自分の名を「松三十郎」と称していました。
白黒の古い映画を意外にも見れる根性があるということで
難しいかもしれない「切腹」を見せたところ、
彼の人生を変える映画となったようで親として責任を感じています。
彼はこの映画についての論文で映画学科のある東京の大学にAO入試で
取り合えず合格しましたが、この年齢で「切腹」を知っていることに対し
興味を持たれたようでした。
そんな縁ある映画がリメイクされることは、悪いことではありませんが
以前にも書いたように過去、巨匠が作った「用心棒」も「隠し砦の三悪人」も
役不足でいずれもいい出来とは思えません。
今回の「切腹」を手掛ける三池さんは、これまで「ゼブラマン」、「ヤッターマン」
「13人の刺客」などを手掛けた監督で一部にカルト的支持者がいますが
ボクは全く評価していません。
「13人の刺客」を見ましたが筋書きや演出において黒澤の「七人の侍」の影響を
感じますが、品が無く大雑把で中味のない娯楽映画でしかありません。
その監督にリメイクされるなんて「切腹」が汚されるような気持ちであり
次男の気持ちがよくわかります。
家族3人で鍋をつつきがら、どの監督だったらいいのか、配役は誰?など
話の輪が広がりました。