2022.05.05
鎌倉・白河の旅 3日目 その1
鎌倉・白河の旅 最終日(17日、月)
午前9時ごろ元スタッフの田中(旧姓岩佐)さんに迎えに来ていただき
彼女の車で宮脇檀氏設計のヴィラ福村邸に向かいました。
田中さんはアトリエ最初のスタッフで草創期を支えてくれた大変優秀な女性でした。
お互いに喜怒哀楽が大きく喧嘩もたくさんしましたが
彼女の愛情あふれるフォローで密度の高い仕事ができ
今では戦友としての懐かしい思い出とともに里帰り時などは定期的に
アトリエに寄ってくれています。
延岡出身ですが知り合いの紹介で会津若松ご出身のご主人と出会われ
郡山でハーマンミラーやイームズなどミッドセンチュリーの家具販売を行う会社を起業、
当初はネットを中心とされながら、
現在は郡山と宇都宮にインテリアショップも展開されています。
福岡で言えば規模は違いますがBO CONCEPT、3bポッターズ、ウィークス H.L.D
などを運営されている長坂夫妻と同じような方向性だと思います。
そんな田中さんですが当初、郡山と宇都宮の中間地点に会社の人間が集まれる
研修施設の場を探していたところ、中間地点である那須塩原の那須パーキングエリア近くに
宮脇檀氏が設計したヴィラ福村邸が売りに出されていることを知ったとのこと。
ご主人は宮脇さんのことは知らなかったらしく、
彼女は当アトリエに在籍していたことでその名前を聞き驚くとともに
その価値を認めたうえで残していくお手伝いをしたいと考えたそうです。
契約時には千葉まで出向き、売り主の福村氏より当時の貴重なお話等を聞かれたとのこと。
人間のつながりとは不思議なもので
元スタッフだった田中さんが郡山に嫁ぎ——そこで以前から夢だったインテリアショップを開き成功を納め——-宮脇檀氏設計の別荘の保存運動に関わるなど
改めて毎日の小さな時間の積み上げというものは
予期しない結果を生み出す始まりを秘めていることに感動します。
ヴィラは1974年に 竣工。RC造3階建て+木造の混構造です。
700坪の敷地の自然に対峙するような極めて強い幾何学的形態で建っています。
コンクリートは自然との対峙と防御も意味しながら
別荘としての自然との親和性として2階部分に木造の箱が下から持ち出され
支えられています。
50年近くが経ち 、引き渡された時点では木造の先端部が下がった為か支柱が
取りつけられていたそうで原型に戻すために箱下の持ち出し部を補強し
柱が外されています。
エントランス正面、50年代のブルータリズムを彷彿させるような荒々しいストイックな立面
右奥に見える黒い平屋建ての建物が敷地内に新たに建てた田中さんの会社の研修施設。
あとで説明しますが正面の木製の扉は玄関戸ではなく門扉になっています。
全体のストイックな構成に対し木造部は梁の構成がそのまま表現され、
面と線との対比を生み出しています。
コンクリートと木造部の取り合い部が鉄板によって補強されています。
当初、屋根は鉄板葺きであったのを瓦葺きに変更されており、
ここは現況のままになっています。
正面門扉は両サイドの壁に納められるようになっており右は玄関、左はボイラー室
内部につづく————-