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きのう、今日と二日間にわたり二人の若手建築家のオープンハウスを見せてもらいました。
一人は最近全国誌にも取り上げられている福岡のデザイニング展の仕掛け人である
井手健一郎さん。
もうひとりは、これから福岡を拠点にして活動していこうとしている
静岡出身の松本匡弘さん。
この二人は以前このブログで紹介した建築プロデュース会社主催の建築家コンペの
参加者であり、その公開コンペを見学したのち、ブログ上で井手さんの案を評価した
コメントを書いたことがありました。
コンペの結果、松本さんの案が採用され、その竣工物件を今日20日に見せて頂きました。
また、井手さんには今宿の教会のオープンハウスを昨日19日に見せて頂きました。
コンペ参加者の二人による、たまたま1日ずれて連続でのオープンハウス。
どちらの物件も、坪40万円台で完成した物件で非常に興味深く拝見しました。

二つの物件への感想については、ボク自身もまだ発展途上であり、
若手建築家の建物を評価するほどの人間でもありませんが、
取り合えず、自分のことは棚に上げ、年長者として少しばかり簡単な個人的感想を
書かせて頂くことをお許し下さい。

19日の井手さんの教会は、プロテスタントの教会で約85坪の木造3階建て。
かれは、表現豊かに、この教会に対する考え方を地域における解放された集会所とした
うえでの配置計画の意味から、構造上のアイデアまでコンセプチュアルに語っていました。

礼拝堂の上に住宅が乗っているプログラムとローコストという制約のなか
マンサード型の構造フレームや正面ファサードにおけるプロフィットガラス風の
特注ポリカボネートの採用など、非常に厳しいコストの中であきらめずに実現させようと
いう意欲を感じました。
ただ、もう一つ別な考え方をするならば
いっそ、付随する思いを思い切ってあきらめ、開かれた教会という一点に絞り、切り返せば
ローコストであることを逆手に取ったもっとシンプルで強い作品にもなったかと思います。
外に開かれた教会を前面の大きなファサードで示す以外に、もっと構成としての別な示し方も
あったのではと考えたり
外壁の材料なども既製の塗装されたサイディングではなく、無塗装の素の材料をビスも
見せて張るなどしたほうがプロテスタントのつつましさが出たのではないかなど
あれこれと考えさせられました。
逆にコンセプトを優先した結果、切り捨てた部分のなかにまだ切り返しする余地がある部分も
あったように感じられました。


一方、コンペにおいてプランもプレゼンテーションも一見、地味に見えた松本さんの住宅は、
ローコストであることから導き出されたミニマムなプランと形態が、緑多い敷地環境の中で
強い存在感を持って自然と対峙している建物で、住宅におけるあらゆる要望のなか、
ローコストという制約により潔くあきらめ、自然とのつながりという一点に絞り、
切り返した結果、観るものに素直に共感を与える建物になっていました。

非常にシンプルなプランにおける南側に一列に並ぶ、
デッキスペースとリビング・ダイニング・キッチンスペースは、対面の丘状の森に対して
対等な関係、等価で仕上られているため、どちらが外部で内部なのかわからなくなる
ような関係性が構築され、それが結果としてとても気持ちの良い空間になっていました。
また、洗練されたディテールとスパイスの効いたデザインが一つのコンセプトの下に融合し、
トータリティの高い住宅でした。

従来の建築的捉え方なら上記のような見方になりますが、それはある意味、
これまでと変わらない評価軸かもしれず、若手の建築家たちが目指す
社会性という評価軸では捉え方が違ってくるのかもしれません。
いわゆる建築の作品を作るのではない別の価値観が以前の集まりにおいても
あがっており、そこの部分に対する議論がこの二人のスタンスの違いを通して
起こることを期待したくなりました。

評価軸の問題はさておき、お二人とも、今後、福岡を代表する建築家として
是非、頑張って欲しいと思うと共に
ボク自身も「潔くあきらめ、そして切り返せ!」るのか?ということは自問自答しなければ
いけないと改めて思ったのでありました。

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