THE   L

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東京と福岡の二つの拠点を持たれていたご夫妻が終の棲家として
佐賀県武雄市に建てられた住宅です。
敷地は奥様のお父様のご実家があった場所で農地からの転用を行いました。
敷地東側の緩やかに下る坂道に面し、それに沿って流れる水路及び擁壁
により土地は一段下がった状態になっていました。
西側は田園が拡がり遠く山並みが見える拡がりのある景色で
南側は隣接して2軒の住宅が建っていました。
したがって武雄市中心部より離れた北側の自然に囲まれた場所ながら
周囲の環境条件としてはかなり限られた制約がありました。
奥様は福岡の自宅で料理教室を開催されており、この住宅においても
生徒用の来客駐車スペースが必要でした。
建物は西に拡がる風景を借景とし各部屋より眺めることができながら
南側隣地建物を自分の建物で遮断できるL字プランを採用しています。
敷地の南北方向いっぱいに建物を伸ばし、北側よりゲストルームを兼ねた
和室、離れ感を出す土間スペースのエントランス、リビング、ダイニング
キッチン、サブエントランスを一列に並べ、L字に折れ曲がってサニタリー
寝室、WIC、趣味室と機能的に必要な関係性によって一列に並べられた
諸室をサブエントランスを境にL字に曲げ、パブリックスペースと
プライベートスペースの領域として分けています。
来客用駐車スペースのレベルは道路に沿って段状とし1m近く下がった
現況地盤の上に盛り土を行い建物の基礎を擁壁の代用としてコストダウン
を計っています。その結果、建物の道路側スペースは建物際通路、
飛び出したポーチ、植栽等により雰囲気のある風景を造り出しています。
また、建物の道路側開口部は奥行きのあるハイサイドライトによって
東側外観の表情を造るとともにプライバシーを高め、内部においては
西側に大きく開いた開口部との光のバランスを考慮しています。
リビング・ダイニングの天井は緩やかな弧を描く曲面で東西からの自然光
をグラデーション状に柔らかに受け止めます。
来訪者はゲスト用駐車スペースに車を停め、緑に囲まれた建物際の通路を
経てポーチに入り玄関扉を開くと目の前に庭まで続く土間が拡がり、
催しの内容によってはそのまま西の庭へと案内されることも可能で
建物によって一旦遮断された西の風景が目の前に拡がる驚きや
感動を期待したいと思っています。

所在地  佐賀県武雄市朝日町大字中野
用 途  専用住宅
竣 工  2021年
設計監理 大石和彦建築アトリエ
施 工  大石建設
敷地面積 680.19㎡(205.8坪)
延床面積 188.39㎡(57.0坪)
構 造  木造在来平屋建て
photo  Techini Staff