都市において自然を感じながら生活していくことは、誰もが臨む精神的欲求であるが、現実には敷地と周辺環境との様々な制約により、住宅と環境との関わり対して不満を持っている人が多いのではないのだろうか。
都市に住む上で自然と人との関わり方が、従来の庭等を通した直接的な関わりを欲するには、敷地が狭すぎ、ささやかな関係になっている住宅が多い。

都市住宅として住む為には、もう一度自然との関わり方について見直すことが必要である。
直接的な関わりから間接的又は抽象的関わりへ転換することにより、住まいは抽象的イメージを通して自然を感じさせる器になりえる。
日本人にとって自然に対する抽象性は、茶室の空間や禅の精神を通し、十分理解できるものとなっている。
それを、従来の形式化された感覚から時代の新しい感性を通したものに組み替えることによって、私たちは都市の中で精神が解放された住まいを求めることができると考えている。

Cityの土地は面積が48坪あり、地下鉄沿線の幹線道路より住宅地へ70m程入った住宅道路に面している。
道路を挟んだ南側には7階程度のマンション群が立ち並んでいる。
各棟は、各々日陰規制をクリアしているものの、連続して並んでいるため、敷地の1F部分には、冬の日射しは届かない。
また、南側にささやかな庭をとったとしても、マンションからの視線を考慮して生活しなければならないことが明白であった。

この建物はまず860mmのモジュール(基準)寸法の倍数を基準にプランを作っており、コストを抑えるための単純化されたプランとモジュール寸法の変更により、敷地に対しての建物ヴォリュームの調節が可能な3階建住宅のモデルプランとして計画されている。
また、最大限の空間ヴォリュームを確保することにより将来の変化への対応も可能となっている。

構造は1Fがコンクリート、2、3Fが鉄骨の混構造となっており、2Fプラン中央には4本の鉄骨柱が立ち上がり、外周部H鋼とともに建物を支えている。
内外とも主な構造(コンクリート壁、鉄骨柱、梁)を露出させ、ハリボテ建築にならないような引き締まった表現とキュービックな形でありながら詩情を感じさせる現代的美しさを求めている。

2F南側の全面にはデッキが取られ、道路側のマンションからのプライバシーを守り、デッキの使われ方をより有効にするために、半透明のガラススクリーンによって、住まい手の気配を感じさせながらも道路に対して閉ざされている。
デッキには、吹抜けを通して屋根がかかり、気候の良い時期には、外部であり内部のようなスペースの外部リビングとして機能することが期待されている。

プラン中央には、3層を貫く光の筒があり、らせん階段が組み込まれている。
光の筒は、頂部に取られた4方向のトップサイドライトからの太陽の動きと雲の流れに伴い、刻々と移ろっていく自然光で満たされ、現象としての自然が、抽象化されて感じることができるようになっている。
また、西側に取られたガラス開口部の内側は、丸穴をあけたボードによって閉ざされ、夏場の日射を制限するとともに、木漏れ日的感覚を抽象化している。

2Fは、従来のアットホームな住宅的落ち着きを求めず、吹抜けを伴った天井高4.8mのL型空間に圧倒的拡がりを感じさせるスペースとなっており、都市空間におけるダイナミズムを住宅の中に持ち込むことが、狭い敷地において自然の抽象化とともに精神が解放される大きな要素であると考えている。

敷地面積 155.4㎡(47.0t)
延床面積 187.6㎡(56.7t)
竣  工 2002年
photo   Kouji Okamoto
構造設計 吉原建築構造計画
施  工 甲斐建設