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8月に妻とともにカンヌ映画祭でグランプリを受賞した話題の映画
「万引き家族」を観に行きました。
万引きという反社会的な行為である犯罪を起こしながらも
血縁関係のない個人同志が家族という共同体を偽装化して繋がることで
一時的であるにせよ孤独感から逃れているようにも思いました。
監督の是枝氏は「海街ダイアリー」もそうですが人間の感情を細やかに
描くことがうまくボクは現代の「小津安二郎」だと思っています。
もちろん小津ほど映画の構図としての形式性にはこだわっていませんが。
ところでこの「万引き家族」では先日亡くなられた樹木希林さんが
演ずるおばあさんがこの家族の要としての重要な役どころになっています。
それは戦後の高度成長時代の日本における家族制度が核家族化していくなかで
偽装としての家族関係であっても失われたシンボル性を強く感じるからです。
実はこの映画を観て、以前観たことのある大島渚監督作品の「少年」を
思い出しました。是枝氏はこの作品をかなり意識して製作している
ようにも感じます。それはこの二つの作品が家族を題材にしながら
極めて対称的であると思うからです。
 
 これまで、大島渚の映画は観念的で難解なものが多い中
この「少年」は低予算のロードムービーとして抒情的な作品となっています。
先日、女優の吉永小百合さんもこれまでの印象に残る映画として
この「少年」を挙げられていました。
少年の父親は傷痍軍人で継母とその連れ子の2才ぐらいの弟がいます。
傷痍軍人で仕事ができないということを理由に、一家は生活費を稼ぐために
妻に「当たり屋」をさせ生計を立てていましたが
妻の妊娠をきっかけに少年が当たり屋として稼ぐようになります。
「当たり屋」とは故意に車に接触し因縁をつけて示談金をせしめる行為です。
低予算のロードムービーですから出演者はほとんどこの家族の4人だけで
父親役が渡辺文雄、継母役が大島の奥さんでもあった小山明子
物語の中心である少年の役は孤児院にいた阿部哲夫という素人の男の子で、
映画はこの子の語り口でほとんど進行していきますが
彼の中にある「さみしさ」というものが全編にわたり伝わり
胸を締め付けられます。
「万引き家族」においても是枝監督は幼児虐待を受けている女の子役として
おそらく素人同然の子を採用していますが
この二つの作品とも素人を使うことで
演じることではないリアリティを引き出しており、
このリアリティさが「少年」という映画を
いつまでも印象に残るものにしています。
彼はこの家族から逃れたいと思い、家出をしますが生活費もなく
また戻ってきます。
当たり屋という行為に罪悪感を持っており
自分は宇宙人になりたいと弟へ言います。
宇宙人はアンドロメダ星雲から来た正義の味方で
悪いことをする地球の悪人をやっつけるために来たんだと言います。
宇宙人は親はいないし一人だからお父さんもお母さんもいない。
本当に怖くなったときは星から別の宇宙人が助けにきてくれる。
自分はそういう宇宙人になりたかったけど
なれない-----–。
当時ウルトラマンの放送開始が1966年でこの映画の制作年度が1969年なので
時代を反映したものになっており、この4人家族という設定も
核家族化が叫ばれている時代でもあります。
とにかく「万引き家族」を観たあなた!
みなさんはどう思われましたか?
大島渚の「少年」を観ることで約50年の時代感覚の違いが理解でき
この映画の見方を違った角度で確認できるかもしれません。
さらに、施主の予算がないので面白いものができないとぼやいている
若手の建築家のみなさん!
大島渚なんか1000万円の低予算でこの映画を作ってるんですよ!
もちろん予算がないということを逆手にとって戦略を練ることは必要ですが
挑戦する意欲を持ちましょう!
      
    

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