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7月末の平日、佐賀県立美術館で開催されている
吉岡徳仁による「トルネード展」に行って来ました。

かれは当初、インテリアデザイナーの大御所である倉俣史郎さんに師事し
その後、ファッションデザイナーの三宅一生さんのところで修業され
独立後は家具デザインやインダストリアルデザインなどを
主に手掛けられている印象がありましたが、
最近、次第に自然現象を基にしたインスタレーションをイタリア・ミラノで開催される
ミラノサローネのLexus、SWAROVSKI、MOROSOなどで発表し、
デザインの領域を超えたアート作品として表現されるようになってきています。

ボクも自然現象の抽象化には非常に興味があり、
かれがそれに向かって取り組まれてことをとても羨ましく思っています。
今回の会場構成は何十万本によるストローの集積が浮遊しているような錯覚に
囚われる抽象化された漂う雲のような中を歩き回りながら、
ポイントポイントに置かれている自然現象に基づくアート作品としての椅子を
鑑賞することができるようになっていました。
特に水の塊をガラスの素材を使って表現した「WATER BLOCK」は
素晴らしく、水の表面が風によって小さくささくれ立つ様が見事に表現されており
水の透明性と流体性を感じさせます。

(オルセー美術館で使用されているWATER BLOCK)

作品の数は数点と少ないにもかかわらず、十分見応えのある展覧会になっており
ここ数年のかれの活動を紹介したビデオは非常に面白く拝見させて頂きました。
そのなかで京都のお寺の境内に作ったガラスの茶室が紹介されていましたが
やはり自然現象を抽象化して建築的なものとして表現することは難しく
茶室をすべてガラスで作るという行為は、外国人っぽくて
日本人の価値観からすると違和感を覚えます。
それは影の存在に対する受け止め方がないからであり
ああーもうボクってダメー!と思っていたころが
おこがましくもなーーんだ!とちょっとばかり安心-----—-。

この企画展が行われた佐賀県立美術館はリニューアルオープンということらしく
エントランスホールから各展示室へつながる空間は流動的で
壁の仕上げはコンクリート打ち放し、床は洗いざらしのようなモルタルでありながら
非常に気持ちよく、美術館で床がモルタル仕上げというのは初めて観ましたが
むしろ目地のないプレーンな感じがミニマムでこういう場では
よく合っていると思いました。
それに比べ、展示室の天井は照明や空調の吹き出しなどいろいろなものがついており
「トルネード展」では天井が何もないプレーンな空間であれば
さらに浮遊感が出たようにも思われ、改めて天井の存在について考えさせられました。

その後、接続されている通路を通り隣の佐賀県立博物館へ。
この建物は、第一工房の高橋てい一さんと東大の内田祥哉さんが
1971年に建築学会賞を受賞されており、お恥ずかしい話ですが初めて観ました。
内部は1階の中央ホールから2階の外部に向かい4方向に飛び出した大階段を上がって
展示室を見て回るというダイナミックな構成と
プレキャストコンクリート製格子梁による構造で大阪万博当時の前衛として
力強い建物でした。


(4方向に飛び出す大階段の壁に設置されている手すり)


(巨大なステンレスワイヤーが手すりに使われておりびっくり!かっこいい!)

2階展示室は佐賀の郷土の歴史関連のものが展示されていましたが
その中に昔の民家の模型がありよく見てみると------。

ひゃあー!!今にも通じる「ジョウゴ造りの家」
これってNKSアーキクツの末廣夫妻がよく使っている雨水処理方法じゃん!

-----こんなところに前衛のヒントがあると思うと—-昔を学ぶということは決して
古いということではないと思いました。

“7月末の様々な前衛 その3” への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
    PASS:
    以前、日曜美術館のアートシーンで徳岡さんのガラスの茶室、私も拝見したの。青蓮院だったと思うけど、天井に設けられたガラスの塊で、太陽の光でプリズムが室内に写る。ちょっと茶室としては落ち着かなそうって思ったんだけど、周りの自然を360度感じられるって、凄い発想だなぁって思ったのを覚えているよ。一度、京都に行った時に、行ってみたい場所の一つね。

  2. SECRET: 0
    PASS:
    置いてある場所が雑木林のなかだったりなら
    まだ許容できるのだけれども------。
    影の存在により光や移ろいを強く意識することができ
    日本の伝統的空間である茶室を
    現代の価値感で新たなものとして提示するのであれば
    形式をそのまま持ってきてその構成要素である
    床、壁、屋根をすべてガラスにするのではなく、
    あり方について切り込み、分解して
    再構成するようなトライをして欲しいと思いました。

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