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第3回の勉強会でプレゼをして頂いたNKSアーキテクツの末廣氏より
行橋の住宅が見学できるお誘いがあり日曜日の雨の中、スタッフの松尾、
ソルト建築設計の西岡さんとともに行って来ました。

この住宅のクライアントの方が出身校の吹奏楽の生徒たちを招き
住宅のホール(リビング)を利用して九響フィルの方々によって
指導を兼ねたミニコンサートを定期的に開かれているようで
思いかけず勉強会に出席している10名ほどの建築家に声を掛けて頂き
見ることができるようになりました。

建物の構成として1階は南北の庭と繋がりながら、2階は東西方向の景色(川と山)を
見るために1階と2階のプランを直行させたモデリングが繰り返し行われ
現在の形に至っています。
道路側の写真は川側の面である妻側でこの住宅の正面になっています。
この特異な形態は2階部分がU型のチューブ状になっており
二つのチューブの間に雨水の集水を兼ねたU型が挿入され
内部における二つのチューブに挟まれた空間を
間延びさせないような役割も持たされています。
この三つのU型と両サイドの屋根の曲面との隙間に取られた4か所のトップライトから
光が落ちてくるしかけになっており、その構成がそのまま妻側の立面になっています。

敷地と道路には少しばかりの段差があり、門扉から入るとその段差を
大きめの石ころをベースとした石組みによる庭園によって緩やかな勾配として
デザインされてあり、内部ではエントランスからリビングへとスキップフロアに
なっています。

幅1.2m以上あるたて軸回転の1枚ドア

内部が部屋になっている白いU型チューブは中央にあるリビングの東西側に
平行に配置されている2本のコアによっても支えられており、コアの内部は
このエントランス側ではシューズボックス、階段、2階の二つのチューブを
行き来する通路が入り、奥のコアには洗面、浴室、通路、収納など。
必要機能がすべてコアに納められているため、
それ以外の空間は機能面の束縛から自由で、
またコアは南北方向にすべて伸びている訳ではなく途中で切れているため
空間に高い流動性が生まれています。
下の写真はリビングより半階上がってリビングを見下ろす桟敷状の和室を
エントランスホールから見たもので手前左側が玄関扉、
右側の壁がコアになっている部分で入口より入るとシューズボックスがあり
半階上がって右奥がリビング、奥に進んで半階上がると和室、
和室よりエントランスホール吹き抜けに出た階段を上がり
二つの白いチューブの中の部屋にアクセスします。

下の写真はエントランスホール北側の庭でエントランスからリビングへは
この庭を見ながら左側へ回り込むようなかたちでアプローチでき
リビングがホールとすればまるで劇場のホワイエのような流動的で豊かな空間で
感動します。
また可動の開口部は木製サッシで4周すべてが隠しかまちで
フレームが見えない納まりになっています。
(ここには生徒のかばんが置かれていました。)

半階上がったリビングスペースへの入り口からのエントランスホール見下ろし
左側の曲面が北側の庇で右側が部屋が入っているチューブ

エントランスホールから見える和室は、リビングより半階上がっていることにより
大きく南側にカーブを描き下がった庇によって天井が低く感じられ
意外にも落ち着ける場所になっています。
庇と床との間に取られたよこ長のスリット窓からは南庭の緑を見ることができます。
右側の腰があるところからリビングホールを眺めることができます。

和室を出てエントランスホール吹き抜けに出ている階段を使って2階に上がります。
トップライトからの光が部屋となっているU型の曲面をグラデーションになって
下りてきます。

下の写真は和室よりエントランスホール北側を見たところ。
二つのU型チューブの高低差により天井見上げ空間が変化に富んでおり
その下に様々な場が作られ均一性とは無縁の状況ができています。 

ミニコンサート会場として使用されているリビングスペース。左上が先ほどの和室。

高い吹き抜けとなっているリビングスペースは
東西方向に配置された2本の南北に延びる細長いコアによって挟まれており
コンクリート杉板型枠仕上げの硬い質感のため反響音を抑えるために
細長く矩形のスリットが掘り込まれ、奥に吸音材が貼られています。
またU型曲面の仕上げもコンクリート打ち放しに白い塗装をかけたもので
素材としては硬いのですが、曲面になっているためか音が拡散され
内部は程良い音環境になっていました。

高低差のある2階の部屋(ひとつはご両親の寝室とサニタリー、リビングと
もうひとつは将来用の子供室2室)が入ったU型チューブと中央はU型の雨樋

2階U型チューブ内、二つの子供室と中庭

もうひとつの2階チューブ内、親世帯ベッドルーム、サニタリー、リビング

最後に北側の庭に面して取られた1階ダイニングスペース、
リビングとは吸音材が貼られた大きな片引き戸によって仕切ることができます。

今回、NKSアーキテクツの住宅を久しぶりに見ることができるとともに
クライアントが住まわれた状態で観るのは初めてで感動しました!
日本人が考えそうにない大胆な構成と緻密なディテール、
それぞれの場が与えられた統一感のなかの多様性
暮らし方を配慮した収納計画と空調システムなどとともに
今回のミニコンサートのように地域に開かれた社会性などなど
建築家の存在というものが前衛でありながらも決して独善的なものではないということを
強く感じさせたものでした。

ありがとうございました。

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