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先週の土曜日、平安氏の会社ミスターフローリングにおいて
第3回建築勉強会が開かれました。
今回のプレゼンテーターはNKSアーキテクツの末廣香織氏でした。

彼はオランダのベルラーヘ大学に留学されていたこともあり
冒頭はオランダ構造主義についての説明からスタート。

1970年代に学生だったぼくらの世代(50代半ば以降)にとって構造主義を唱えた
レヴィ―・ストロースやミッシェル・フーコーは建築を学んでいる者にとっての
難解な(当時も含め理解しがたかった思い)現代思想であり
よく専門の建築雑誌に取り上げられていました。

末廣氏によれば構造主義は難解ではなく、
言語に潜む構造を理解することと他ならないと言われ
当時、オランダでは集落の研究により構成に潜む構造形式を方法論として
当時の建築計画におけるプログラムに応用する試みが行われていたとして
アルド・ヴァン・アイクによるオランダの孤児院の写真を紹介されていました。

今回の末廣氏による解説のように当時、具体例を上げて
もっとわかりやすく説明してくれる先生がいればよかったのですが、
九大でもこの話は1年生の授業にされるらしく
優秀な九大生でも1年生ということもあり、よく理解するのは難しいと言われていました。

我々が学生時代の頃は磯崎新氏が全盛期で建築が哲学を通して論じられ
非常に難解で当時の学生はみな磯崎さん並みに哲学を論じることができなければ
建築家にはなれないと思い込むほど磯崎新の存在は
多大な影響があったと思います。
ボクも当時アトリエ系を目指さす、組織系事務所に入ったのも
そのようなコンプレックスがあってのことかもしれません------。

オランダ構造主義に続き、末廣さんが目指しているものは柔軟な構造主義というもので
構造主義をグリッドと捉えるならば
柔軟な構造主義は伊東豊雄氏設計の多摩美の図書館のプランのように
自由曲線による網目状のようなもので
最近、末廣さんの建物に曲線が多くなっているのも
無意識的にそのような方向性を持っているからかもしれないと言われていました。

そして現代建築においてはそのようなフレームのそれぞれに快適な場を作っていくこととして
アフォーダンスという言葉を上げられていました。
以前、近大の非常勤講師の授業において担当の岡田威海教授が
建築2年生にアフォーダンスについてレポートを書いてくるように言われていたのを
思い出しましたがそれまでアフォーダンスという言葉は全く聞いたこともなく
非常勤ながら「アホがダンスすると—-?」と内心思っていました------。

アフォーダンスとは認知心理学における言葉らしく
我々は環境を捉えるときに、行動を促進させたり、制限させたりするような特徴を
読み取っており、環境のこのような性質をアフォーダンスと呼んでいるそうです。
アフォーダンスをデザインに応用した事例として
ドアの取っ手が平板な場合、それを押すことをアフォードする。
取っ手がリングなら、それは引くことをアフォードする。

このように建築空間における場を作るとは
人の行動を促したり、誘導したりするような仕掛けも必要でそれを含め
社会構造と建築の空間構造を関連づけながらコンディションを作っていくというのが
NKSアーキテクツの考え方になっているということでした。

大学で講義を受けているような非常に面白い内容でした。
末廣氏の仕事で感心するのは、フェリー乗り場やコミュニティセンターなどの大型施設から
クリニックや大邸宅、小さな住宅に至るまで一貫性があって
結果的に施主の都合に振り回されずに作品になっていることであり
住宅でも大味になっていません。
それは常にそれに応じた構造の選択が適切であり
その構造を生かした構成と表現になっていることだと思いました。

次回、8月29日(金)第4回のプレゼンターは田中俊彰さんです。

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