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(新建築1月号より転用)

フランスのルーブル美術館の分館としてランス市に完成したルーブル・ランスは
国際コンペによって選ばれた日本のSANNA(妹島和世、西沢立衛)が設計した美術館で
最近建築各紙に取り上げられている写真を拝見しました。
プランは外部に対し閉じた4つの長方形の箱がわずかにずれながら並べられ
箱の間に唯一、外に対し開いたガラスのホールがある極めてシンプルな構成です。


(CASABELLA 823より転用)

妹島氏はこれまで外部と内部の境界をあいまいとした方向性の模索を続けていると
思いますが今回の建物は、これまでのガラスやアクリルなど透明感のある材料に替わり
全く不透明な材料であるアルミの金属板を通し、
あいまいさの表現を獲得できていることに驚かされました。

以前から外部と内部の繋がり方としてあいまいさを通し
風景や自然現象を抽象化し(ガラスに張ったフイルムによるぼかしなど)
内部とのグラデーションナルな関係ができることに興味を持ってはいましたが
どうしても空間の構成とは関係なく表層において成立しそうで
考え方において全く前に進んでいませんでした。
ルーブル・ランスでは、鈍く磨かれたアルミニウム金属板を通し、
内外の風景がポエティックに映し出され
虚像としての美しさを獲得するとともに、
美術館建築としては革新的展示方法が選択されています。

この美しい内部の反射する壁に絵画を掛け並べるのではなく
絵画や彫刻とともに展示空間の上から降り注ぐ自然光の下
ランダムに並べられた自立壁に掛けられ、
その風景がそれを取り巻く壁によって映し出されています。


(CASABELLA 823より転用)

表層上の表現を展示構成の在り方と関係づけることにより
単なる表層という問題を乗り越えていることに脱帽するとともに
このようなアプローチがあることに非常に興味を持ちました。

ユニバーサルな空間でありながら
ユニバーサルという言葉に対する歴史上のこれまでの批判を
乗り越えるものとして石上純也によるKAITと共通性を感じます。

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