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大阪の建築ユニット、木村松本さんたちのオープンハウスに先週の土曜日に行ってきました。
場所は、福岡市郊外の丘陵地に作られたニュータウン内の一画。
そこは、かつて、大学の授業で習ったことのあるクルテザックという住宅街区に対する
袋小路状の進入道路と歩行者通路との区別を行なう形式の発展系で
袋小路がメイン道路からループ状に配置された街区計画になっていました。

そのループに面して房状に住宅が配置されているのですが、案内の地図がわかりにくく
何度もメイン道路から各ループに入りなおしながらの街区ナンバーの確認の繰り返しで
探すのに大変苦労しました。

住宅は、矩形の敷地に対し約7度に振られた7m角の正方形のプランが2層に立ち上がり
四角錘の屋根になった形態で、1階ではその中に4つのスペースに十字状に仕切った
壁が敷地外周部と平行に配置され、2階は1階十字壁の2辺に合わせた箱だけがある
オープンスペースで、内壁は形態に合わせて張られた構造用合板を
クリアと白色塗料を50%ずつ混ぜた塗料によって染色してありました。

木村松本さんたちは、住宅地における住戸と周辺との関係において
従来の表裏のある関係ではなく、
すべてのシチュエーション(廻りの状態-隣の駐車用庇、エアコン室外機、ゴミ箱等)を
あるがままに受け入れれるような関係を操作的に見せずに、
日々の生活を通して自然に受け入れながら
内部の十字状の壁が7度に振られた建物のアウトラインにより敷地周囲の住戸との
平行な関係性として意識させられることで
内部と外部とのつながりにおける
新しい関係性の構築をミニマムな状態で作ろうとされています。


見学に行った当アトリエのスタッフも含め、
7度ずれたことに伴う内外部のつながりが十分に認識できるのか
物足りない感想を持った意見もかなりありますが、
かれらがSDレヴューに取り上げられた「三人の作家のためのアトリエと住宅」おいて試みた
領域のあいまいさを生み出すための構築的構成と外部に対する自己完結的
あり方への疑問を巡る二人の間で交わされた対話を聞かされてしまうと
明快な構成で示すというあり方に対して、
かれらはすでにそれを通過し、自問自答してきた上での今回の展開では
意図的に避けた強い意志があるようです。
今回の住まいが都市に対して積極的に開いていく方法の中で、
映画「東京物語」の監督である小津安二郎のように平坦なストーリーのなかでの
人物に対する細やかな描写と背景との関係が主題であるように
ドラマチックな建築的つながりを求めていないスタンスが十分に読み取れ、
そこの部分を批判するほど次第に自分の価値観が大げさなものとして
感じてしまうことに悔しさが込み上げてしまうのでした----------–。

オープンハウスの後、仕掛けられた木村松本氏たちの講演会と討論会に出席し
場を移しての懇親会にも朝方の4時までとうとう付き合ってしまったオジサンの
密着取材による感想です。
上記の内容も何を言っているのかわからないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが
よくわからないことを引き出してしまう魅力があるということです。
とにかく、言葉を選びながら緩やかに話されるお二人は、非常にソフトなイメージ
にもかかわらず建築に対して極めて真摯な態度で向き合われていることが
よくわかりとても好感を持ちました。

“木村松本氏のオープンハウス” への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
    PASS:
    先日は引っ張りまわして、大変申し訳ありませんでした。
    大石さんの姿に、改めて自分も考えさせられました。
    大変ありがとうございました。
    7度という繊細なズレは、関係性において、境界を消し、超えていく状態を作りだし、何よりも受け入れる状態を作り出していると思います。
    すごく自然で、自由に。
    あくまでも僕の見解ですが。
    もっともっと、いろんな話をさせてください。
    今後ともよろしくお願いします。

  2. SECRET: 0
    PASS:
    kiyoさん、先日の大企画ありがとうございました!
    お陰さまで月曜日まで疲れが残りました。
    つつじヶ丘の住宅は、そう!、感覚的に言って自然なんですよ。

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