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翌日、頭がボーとしている状態で前日行なわれた木村松本氏のオープンハウスのある
住宅地より少し南側にある古い住宅団地に建つ住宅のオープンハウスに妻とともに
行って来ました。設計はNKSアーキテクツの末廣夫妻。
かつての有料道路から回りながら上がり進むと正面にいきなり見えてきます。
末廣さんらしいとても存在感のある建物で一見、不思議な組み合わせに見えます。
建物は二世帯住宅になっており、角地を陶芸の仕事をされている子世帯の仕事場のための
外来駐車スペースの部分とプライベートな庭スペースに分離するために
庭を囲むUの字が八の字状に開いた居住棟とその一翼に内側廊下を挟んで並行に配置され
駐車スペースに開く作業棟を並べたプランになっています。
Uの字棟の屋根は、中庭側への片流れで、作業棟は内廊下を挟み反転した形態として
置かれています。
この作業棟の持って行き方が配置計画のうえで難しく、
苦労されたのではないかと思いました。
内部はコストがかなり厳しいことを逆手にとって、構造体と壁及び屋根下地財が
すべてむき出しになっていますが、納まりがシャープであるためか全く泥臭く感じさせない
ところがさすがです。
Uの字を八の字状に開いた形態の断面部材が繰り返されながらカーブを描いていく
奥行き感は迫力があるとともに美しく見えます。

この場合、デザインは構成と構造の結果であり、取り繕ったものが一切ないというのが
末廣さんらしく、明快で小気味いい建物でした。


大阪の建築ユニット、木村松本さんたちのオープンハウスに先週の土曜日に行ってきました。
場所は、福岡市郊外の丘陵地に作られたニュータウン内の一画。
そこは、かつて、大学の授業で習ったことのあるクルテザックという住宅街区に対する
袋小路状の進入道路と歩行者通路との区別を行なう形式の発展系で
袋小路がメイン道路からループ状に配置された街区計画になっていました。

そのループに面して房状に住宅が配置されているのですが、案内の地図がわかりにくく
何度もメイン道路から各ループに入りなおしながらの街区ナンバーの確認の繰り返しで
探すのに大変苦労しました。

住宅は、矩形の敷地に対し約7度に振られた7m角の正方形のプランが2層に立ち上がり
四角錘の屋根になった形態で、1階ではその中に4つのスペースに十字状に仕切った
壁が敷地外周部と平行に配置され、2階は1階十字壁の2辺に合わせた箱だけがある
オープンスペースで、内壁は形態に合わせて張られた構造用合板を
クリアと白色塗料を50%ずつ混ぜた塗料によって染色してありました。

木村松本さんたちは、住宅地における住戸と周辺との関係において
従来の表裏のある関係ではなく、
すべてのシチュエーション(廻りの状態-隣の駐車用庇、エアコン室外機、ゴミ箱等)を
あるがままに受け入れれるような関係を操作的に見せずに、
日々の生活を通して自然に受け入れながら
内部の十字状の壁が7度に振られた建物のアウトラインにより敷地周囲の住戸との
平行な関係性として意識させられることで
内部と外部とのつながりにおける
新しい関係性の構築をミニマムな状態で作ろうとされています。


見学に行った当アトリエのスタッフも含め、
7度ずれたことに伴う内外部のつながりが十分に認識できるのか
物足りない感想を持った意見もかなりありますが、
かれらがSDレヴューに取り上げられた「三人の作家のためのアトリエと住宅」おいて試みた
領域のあいまいさを生み出すための構築的構成と外部に対する自己完結的
あり方への疑問を巡る二人の間で交わされた対話を聞かされてしまうと
明快な構成で示すというあり方に対して、
かれらはすでにそれを通過し、自問自答してきた上での今回の展開では
意図的に避けた強い意志があるようです。
今回の住まいが都市に対して積極的に開いていく方法の中で、
映画「東京物語」の監督である小津安二郎のように平坦なストーリーのなかでの
人物に対する細やかな描写と背景との関係が主題であるように
ドラマチックな建築的つながりを求めていないスタンスが十分に読み取れ、
そこの部分を批判するほど次第に自分の価値観が大げさなものとして
感じてしまうことに悔しさが込み上げてしまうのでした----------–。

オープンハウスの後、仕掛けられた木村松本氏たちの講演会と討論会に出席し
場を移しての懇親会にも朝方の4時までとうとう付き合ってしまったオジサンの
密着取材による感想です。
上記の内容も何を言っているのかわからないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが
よくわからないことを引き出してしまう魅力があるということです。
とにかく、言葉を選びながら緩やかに話されるお二人は、非常にソフトなイメージ
にもかかわらず建築に対して極めて真摯な態度で向き合われていることが
よくわかりとても好感を持ちました。

当アトリエの現場は、現在3件ありますが、建築現場は日曜日と盆、正月以外は
祭日であっても動いています。
22日に3件の現場
(市崎O PROJECT,笹丘Y PROJECT,茶山公園に向かって開け!PROJECT)
を全て回りましたが、どの現場も皆さん一生懸命働いておられ頭が下がる思いでした。

市崎O PROJECTは、敷地周囲のコンクリート外壁の塗装に入っており、
外周部が終わり次第、木造部分の茶色の吹付けに入る予定です。
内部は、ほぼボード下地が完了し現在、突き板合板の接着貼りを行なっています。
突き板が終われば、内部壁の吹付けに入る予定です。
突き板は、前田建具の前田さんのところであらかじめ塗装してもらったものを張っており、
以前、松山さんから教えて頂いた突き板ボードの張り方について
現場と前田さんと事前に協議し
接着剤とピンの併用では、後でピンホールができるため、前田さんの提案により
はけを使わず、接着材を下地にスプレーして接着し
仮止めのピンを使用しない方法で行なっています。

笹丘Y PROJECTは、1、2階の木枠の取り付け及び1階天井下地が完了し、
外部笠木、水切り等の板金工事が完了次第、サイディング張りに入る予定。
サイディングはライトグレーに塗装されたリブ状の板をタテに使用し、
タテラインを強調した壁と真っ白な庇の水平ラインの組み合わせになっています。
道路前面の二段になった庇が建物に深い陰影を作ります。

茶山公園に向かって開け!PROJECTは、いよいよ外壁サイディングの塗装に入ります。
2階は、ほぼボード下地が完了し、1階のボード張りに入る予定。
2階道路側サッシ前面に設置するたて格子の見本を一部原寸大で作製し
土曜日に施主に立ち会っていただき現場で決定する予定です。


昨年まで5年ほど非常勤講師をさせていただいた九州産業大学建築学科の小泉教授より
先生が3年ほど前に1年間フィンランドに滞在され撮られた
北欧建築の写真を本にされたものを戴きました。
北欧での建築空間と光の関係が氏の美しい写真で収められており、
きっと建築関係者以外の方でも興味が湧く本になっています。
先生の簡潔な文章もわかりやすくとても読みやすい本になっています。

先生、もっと親交を深めさせて下さい!-----—と思ったのですが。
素敵な本を送っていただきありがとうございました。

きのう、今日と二日間にわたり二人の若手建築家のオープンハウスを見せてもらいました。
一人は最近全国誌にも取り上げられている福岡のデザイニング展の仕掛け人である
井手健一郎さん。
もうひとりは、これから福岡を拠点にして活動していこうとしている
静岡出身の松本匡弘さん。
この二人は以前このブログで紹介した建築プロデュース会社主催の建築家コンペの
参加者であり、その公開コンペを見学したのち、ブログ上で井手さんの案を評価した
コメントを書いたことがありました。
コンペの結果、松本さんの案が採用され、その竣工物件を今日20日に見せて頂きました。
また、井手さんには今宿の教会のオープンハウスを昨日19日に見せて頂きました。
コンペ参加者の二人による、たまたま1日ずれて連続でのオープンハウス。
どちらの物件も、坪40万円台で完成した物件で非常に興味深く拝見しました。

二つの物件への感想については、ボク自身もまだ発展途上であり、
若手建築家の建物を評価するほどの人間でもありませんが、
取り合えず、自分のことは棚に上げ、年長者として少しばかり簡単な個人的感想を
書かせて頂くことをお許し下さい。

19日の井手さんの教会は、プロテスタントの教会で約85坪の木造3階建て。
かれは、表現豊かに、この教会に対する考え方を地域における解放された集会所とした
うえでの配置計画の意味から、構造上のアイデアまでコンセプチュアルに語っていました。

礼拝堂の上に住宅が乗っているプログラムとローコストという制約のなか
マンサード型の構造フレームや正面ファサードにおけるプロフィットガラス風の
特注ポリカボネートの採用など、非常に厳しいコストの中であきらめずに実現させようと
いう意欲を感じました。
ただ、もう一つ別な考え方をするならば
いっそ、付随する思いを思い切ってあきらめ、開かれた教会という一点に絞り、切り返せば
ローコストであることを逆手に取ったもっとシンプルで強い作品にもなったかと思います。
外に開かれた教会を前面の大きなファサードで示す以外に、もっと構成としての別な示し方も
あったのではと考えたり
外壁の材料なども既製の塗装されたサイディングではなく、無塗装の素の材料をビスも
見せて張るなどしたほうがプロテスタントのつつましさが出たのではないかなど
あれこれと考えさせられました。
逆にコンセプトを優先した結果、切り捨てた部分のなかにまだ切り返しする余地がある部分も
あったように感じられました。


一方、コンペにおいてプランもプレゼンテーションも一見、地味に見えた松本さんの住宅は、
ローコストであることから導き出されたミニマムなプランと形態が、緑多い敷地環境の中で
強い存在感を持って自然と対峙している建物で、住宅におけるあらゆる要望のなか、
ローコストという制約により潔くあきらめ、自然とのつながりという一点に絞り、
切り返した結果、観るものに素直に共感を与える建物になっていました。

非常にシンプルなプランにおける南側に一列に並ぶ、
デッキスペースとリビング・ダイニング・キッチンスペースは、対面の丘状の森に対して
対等な関係、等価で仕上られているため、どちらが外部で内部なのかわからなくなる
ような関係性が構築され、それが結果としてとても気持ちの良い空間になっていました。
また、洗練されたディテールとスパイスの効いたデザインが一つのコンセプトの下に融合し、
トータリティの高い住宅でした。

従来の建築的捉え方なら上記のような見方になりますが、それはある意味、
これまでと変わらない評価軸かもしれず、若手の建築家たちが目指す
社会性という評価軸では捉え方が違ってくるのかもしれません。
いわゆる建築の作品を作るのではない別の価値観が以前の集まりにおいても
あがっており、そこの部分に対する議論がこの二人のスタンスの違いを通して
起こることを期待したくなりました。

評価軸の問題はさておき、お二人とも、今後、福岡を代表する建築家として
是非、頑張って欲しいと思うと共に
ボク自身も「潔くあきらめ、そして切り返せ!」るのか?ということは自問自答しなければ
いけないと改めて思ったのでありました。